翌朝はお母さんの『おはよ~、ご飯できてるよ』で起こされる。もう、声が優しい。起こし方が優しい。日差しが優しい。何から何まで優しすぎるiの実家。至福のひと時。誰かに朝ごはんを用意されて起こされるなんて、何年ぶりでしょうかっ。囲炉裏のある離れで気持ち良く目を覚まし、Japanese breakfastが母屋で出来上がっていて、なんだか自分が日本昔話の世界にいるようだ。このエリアで唯一食べようと思っていた『みちしおの貝汁』に行かれるかどうか微妙だったが、なんとそれもお母さんが朝から作ってくれていた。前日に『食べに行かれるかなぁ』という小ちゃい発言を母は聞き逃してはいなかった。貝汁というのは、あさりがこれでもかと入った汁。もうこれだけ温かく接してもらって、それだけでも山口県に来た甲斐があった。もう東京帰ってもいいっ。十分満足した!
朝食後、また畑を散歩し、お土産のロールケーキを半分以上、自分で食べてしまいました。手土産を食べてしまって、ごめんなさい。お母さんたち、いつでも食べれるよね?ね?
しっかりエナジーチャージして、友人iの出身地周辺をもう1日かけて探索するか、北上し始めるか、西へ行くか迷った挙句に、お父さんとお母さんと相談して秋吉台へ向かうことに決定。キノコの収穫時期に戻ってきな~と言われたけど、それってもうすぐじゃない?秋の山口県もみてみたいけどね。お母さんはずっと心配していたが、お父さんは行ってこーい、楽しめー、自分の足で登ってこーいと言って、なぜか美祢駅まで車で送ってくれた。
そこからは、ハンドルバーバッグの上にある紙の地図(1:220.000)が頼り。基本、スマホも見ない。(ポータブルWifiがどちらにしても繋がらない。)テント張る場所も決めてないんだから、気の向くままに走ればいいだけ。距離もチェックせず、6日間で走れるだけ走って、最後はどこかで電車に乗っかればいいと思って出発した旅。秋吉台のカルスト台地の石灰岩の白い岩肌目指してただただ走る。心地いいくらいのアップダウンがあるが、初めて見るであろう日本最大級の緑に映える白い岩々が楽しみで仕方ない。そのカルスト台地に入る前に大鍾乳洞秋芳洞に到着してしまった。小学校の時に知ったであろう、秋芳洞。荷物満載の自転車を切符売り場の前に置いて見張りを頼み、ワクワクしながら入って行くと、年間を通して17度くらいのひんやりとした空気が気持ちいい。しかし、しかしだな。私はそう簡単に感動しないタイプなんです。i家のおもてなしと貝汁、立派な畑には感動しまくりましたが、グーニーズとインディー・ジョーンズが大好きな私は、相当期待して入ったものの、完璧すぎてディズニーランドにでもいるような感覚に陥って、どうにもこうにも感動できない。マチュピチュやウユニ塩湖、ナイアガラの滝、グランドキャニオンでも全く感動できなかった私は、若干ずれているのか、鈍いのか。それでも1時間半かけてじっくり周り、出てきた時に『次の洞窟は、どうやっていけばいいですか?』の質問に、『今から自転車で間に合うかどうか』と。『こら〜!』。さっき、3つの洞窟を回れるお得な周遊券を勧めた時になぜ言わない!『車だと結構すぐなんですが』というが、散々自転車はここに置いていっても大丈夫か?って訊いてたじゃないか。蛍光黄色のヘルメット被ってたじゃないか。カルストロードを道なりに行けば着きます、と言われたのでサドルに飛び乗り、カルスト台地を抜ける。美しい景色が目の前に広がり、お母さんから餞別にもらった庭で採れたブルーベーリーとケーキ屋で買っておいたバームクーヘンを流し込みつつ、この台地のどこかでテントを張ると心に決める。途中、ウォークングコースの案内や地獄台という看板を見たが、とりあえず、残り2つの洞窟も見たい。飛ばしに飛ばして、2つ目の牛隠しと呼ばれる大正洞へ到着。この調子で行けば3つ目も間に合う。ここは、規模もかなり小さく、観光客もいない。かがんで通り抜けなければならない箇所もあり、冒険度満載。一人で、懐中電灯をもってさらに奥深く入っていくと、コウモリがパタパタと自分に向かって飛んできた。よっぽど秋芳洞よりいい!感動はしないが、ドキドキする。暗いし、濡れるし、コウモリ出る。3つ目は大正洞から数キロとのところにある景清洞。平家の平景清が壇ノ浦の戦いで敗れ身を潜めていた洞窟らしいが、ここもライトがバッチリついてテーマパークっぽい。その日の夕食を調達しようと入った洞窟近くのパン屋さんKURAはほとんどのパンが売り切れていて、種類が少なかった。くるみ入りのパン(Loaf of bread/大きめのパン)を買ったはいいが、夕食がパンだけというのも寂しい。プロテインも欲しかったので、チーズ売って下さいと訊いたら、売ってないですけど、ちょっと待ってくださいと。お店の方は、大きめのカマンベールをアルミフォイルに包んで、これ持って行って下さいと言ってくれた。お金払いますと言っても、受け取ってくれない。山口県民、皆優しい。ありがたくいただいて、日が暮れる前にテント場を探すことに専念する。カルスト台地の真ん中で、パンとチーズと水とお母さんからもたった梨。エキサイティングなテント泊になるぞと思って走り始めたら、カルスト台地は大正洞に着いた時に既に終わっていた。洞窟制覇したさにぶっ飛ばし、その上かなりの下り坂で、もう一度上る気に全くなれない。あっけなく夢が絶たれというか、諦め、また違う季節にでも来ればいいと言い聞かせ、北上することにした。また、キノコの季節にでも戻るさ。
畑と海の幸朝ごはん。もうね、これ以上の幸せはないよ〜。山口県、来てよかったよ〜。
これが山口の瀬戸内海側で食べられる貝汁。朝からてんこ盛りだ。
畑で採れた大好物のブルベリーとお土産のロールケーキを半分以上食べる。
なぜか、親切に美祢まで送ってくれたお父さん。体育会系だけあって、かなり後押ししてくれた。
稲刈りシーズン。山口のお米、美味しいって知ってた?
秋芳洞は、立派すぎて、感動薄かったな。
雪が積もることもあるカルスロ台地に来て、テント張りたい。何がなんでも、ここにテント張りたい。
こんな景色を横目にテント張るところを探すのです。